ゆっくり、ゆっくり…



か~さんの手を借りずに、できた。
そのあとボウズは、か~さんを振り返りもせずに
スタスタと前を向いてひとりで歩きはじめた。
成し遂げられた自分を味わうように。


ああ、自信って、こういうふうに
かみしめて身にしてゆくものなのね、と
また教えていただいたようだった。



水疱瘡も山を越え、
今朝には水疱もほとんどが乾燥しはじめたボウズ。
あまりに元気があり余っているので
人気のない近所に連れ出した。


つぎの予定もないし、家事もあまりきゅうきゅうでないし、
もともと旅に出る予定をキャンセルしたのだから、と
いつもは気になってしまう連絡事項なども
朝晩以外は置いておくことにして、
完全にボウズのペースですごした。
自分自身もお手当のあとで、テキパキ動けない
のんびりモードだったしね。


そうして、ただ、そばにいて、
ボウズがやりたいことに気がすむまでつきあった。
か~さんが意識した行動は、手を出さないということだけ。
あぶなそうにみえても、側についていたり、
ちょっぴり声をかけるだけにして、
なるべく “ 気 ” もつけないようにした。


手をつないでならできるけれど
ほんとうは自分ひとりでやってみたかったことに、
うれしそうに取り組みはじめた。
いつもならすぐ「か~~~さんっ!」と真っ赤な顔になったりするが、
何度も、なんども、やめかけては再挑戦してさ。


ついにその壁を、すっと抜けられたんだ。


ただ手を出さずに見守る、ということならば
そのときどきでやっていたつもりでいたが、
今日はもともと、か~さんの心構えがちがう。
携帯が気になったりもしないし、
先の予定を考えて時間を区切ろうともしていなかった。


これこれ、これだよねぇ、欲しかったのはね。


か~さんのほうが中途半端だったんだ。
ボウズとしっくりいくときは、これまでだっていつも、
か~さんが用事を気にしていないときだもんね。


そうしていられる感じが、か~さんとしても、
居心地がよかったんだよね。
それが落ち着いているってことだよねぇ。


何度も「携帯持つのやめる!」と言っては
家族に大反対されてきていたが、急にそう極端にならず(笑)、
持っていても自分で使う時間を決めることにすればいいかな。


そしてその、つながっていても自分で境界をひく、ということは
か~さんの、なかなか乗り越えられない壁だった。
どうすればいいか体感させてくれたボウズを見習って、
ぼちぼち、か~さんもその壁は突破したいものだなあ…。