注目すれば・・・


現れる。



妊娠すると急にあちこちで
妊婦が目につく。
みたいなネ。



これは

植物観察なんかをしていると
とてもとても、顕著で

みつけたときには

植物たちのコトバが
胸にとびこんでくるように

通じるようになる。





5年に一度咲く、樹の花がある。
今年は、よく通うところで咲いた。
週末の雨でかなりくたびれてきたその花の、
見頃には間に合わなかった。


冬の間、その木をみつけて

とてもとても気に入って

よく覚えていようと
なんどもみつめていた。




あっ。





10日ほど前に、他の場所で、
樹の花をみつけて写真を撮った。
家で一番性能の良いカメラを
息子に貸していたときだったから、
携帯電話のカメラで撮った。

にわか雨のあとのその樹は
光をあびて虹色に光っていた。
白いこまかな毛のような花が
天にむかってまっすぐに伸びていて、
そこに光がさしこんでいたんだ。

樹肌や葉やたたずまいから
記憶を検索したけれど、
自信がなかった。


見慣れないその花が
光とたわむれて
ほうっ、と光る様子が、
その光がときたま、
虹色に輝く様子が、
うっとりするほど美しくて、
その場ではあんまり、
名前を探したりすることは
どうでもよかった。


そこいらじゅうで
しょっちゅう、
みかける樹ではないが、
知らない樹ではないはず、
でも、
あんな花の樹あったっけ?

そんな感じだった。


手で触れられるほどの高さには
葉はついていなかったし
携帯電話のカメラは
ズームではぼやけてしまっているし

どうでもよくはなかったけれど
それ以上、懸命に図鑑をみる気にも
ならないままだった。


そして。

今日、ぜんぶがつながった。
見頃を逃したその花は、
あの樹の花だったのだ。


見頃は、逃していなかった!

冬じゅう注目していたあの樹の
5年に一度の花、
まさかの、ごくたまにしか行かない場所で、
たまたまゆっくり歩いて
上を向いたところで、

バッタリ、バッチリ、
見頃に出会えていたんだ。

ということが、
いつもの場所でつながった。


もう一度、その場で、
携帯電話のカメラの写真をみた。
携帯電話の画面から、
その花が呼びかけてくるみたいだった。


何をって?

いや、知らない。

きっと、
何を、
とかいうことではなく。


それは、
すごくタメをつくって
5年に一度の出会いを
盛りあげてくれたような
再会だった。


もう見頃は終わりだよ、
と聞いても、観に行ったから。


なんとなく、
行った方がいい気がする・・・

というような

を、
逃すべからず。


それこそが
呼びかけなのだから。



今日は
レギュラーの一連のことが終わって
いつもより結構くたびれていたのだけれど
降りそうだった雨は降らずに
雨雲は消えていて、
しかも、他にも行く人もいて、
すっ、と行く流れにのれたんだ。



携帯電話のカメラでしか
その貴重な瞬間を撮影できなかったことを
一瞬、欲ばって悔やんだが、
家に帰ってもう一度写真をみると
すぐにその欲は消えた。


そこで、
ああ、あのとき
貴重な写真を逃した!
という方向に
想いを持っていくことも
いくらでもできる。
そうならないのは、
なぜか。
ここもポイント。




そして、
そのややぼやけた写真を
しげしげと眺めながら


5年後に
メールを送った。



意識してはじめての
この花との出会いを、
こんなふうに
もったいぶって
内緒話みたいに
たのしめたのだから。


次の5年に、
それはもう、
つながっている。


5年後に気をつけて!
なんて、どこかにメモしたり
するわけではない。


けれど、きっと気がつくはず。


この季節になったら、
わたしはふと、
空を見あげるだろう。
木立のなかで。


そういう想いを、
5年後に送った。



注目は
そんなふうに
つながっていく。

そういうつながりに
想いをのせる。


これは、
花との出会いの
話では
ないのです。