空気まるごと満足



味わってゆっくりいただく、というのは
口だけで味わうものではなく、
料理だけを味わうものではなく・・・


そんなこと、話すまでもないことのようだけれど、
けっこう忘れているんだ。
日常、外食でなく、家庭でそれをできている人が
いったいどれぐらい、いるんだろう。
お客さんが来たときのおもてなしではなくて。


いま一番信頼している、お気に入りの店で
腰痛お疲れ(まだまだ回復への道は長いけど…)の
ランチを家族でいただいた。


メニューは月ごとに決まっている
うどんとゴハン膳のみ。
季節の野菜が入れ替わるだけ。
店のつくりも非常にシンプル。
カウンターからは厨房が丸見え。


そのなかの調理器具もいたってシンプルで
いつも清潔に、整理整頓されてかかっている。
料理人もいつも清潔で、静かで、姿勢良く
指先まで神経をつかって細やかに、ていねいに
盛りつけてくれる。


天然木と思われるテーブルの素材や
ちょうど良い灯りの具合が
シンプルかつ整頓された場所を
あたたかくまるく包んでいるんだ。


客を緊張させるような、
客をよりごのみするような
余分な意識も感じられない。


席についただけで、呼吸が優しくなる。


ごはんの量は、ふだんの自分の食事を考えたら
考えられない少なさなのだけれど、
不足を感じたことが一度もない!
それどころか、半分食べたぐらいで
もう満足感がこみあげてくるんだ。


お膳や、うどんの具のバランスが
とても良いのだと思う。
言われなくても、少しずつ、ひとくちずつ
味わって食べてしまう感じなんだ。


ゆっくりよくかんで食べられるものを
用意しなきゃだめなんだ、と思った。
ガツガツしてしまうのは何故か。
食べても食べても満足感がないときは
何が足りないのか。


ふだんの食卓を豊かにするのは
何よりも心構え。
身のこなしも、形から入らなくても
気持ちが入っていれば自然に美しくなる。


なんだかそんな気がして、
すっかり気持ちが落ちついて癒されたよ。


どこの店なんだ!?って、それは、
縁があれば出会えるようなところかなあ。
なんて言ってみたくなったりして(笑)。
まあもう、いまどきの情報化社会では
有名店なんだけどね。


たまにこういう良いものを丸ごと味わうと、
マヒしがちな感覚に刺激をもらえる。
やたらとそういうところを渡り歩いたときもあったけれど
ぴったりのお気に入りがひとつでもあれば、それだけでいい。
しょっちゅう行きたいとも思わない。
すくなくとも今の気分では、そんな感じ。


この腰痛、腰を据えろってメッセージもあるのかな・・・