セミ、泣いてるね



大泣き。


どうしてか、うちのボウズは
ゴハンを食べているときが多い。
母子だけで、ではなく、
少なくともと~さんがいる、
「食卓を囲んでいる」ようなときだ。
安心できる人達にかこまれて、
ゴハンを食べると、ゆるむんだろうな。


食べはじめから、なんだかグズグズ言ってたんだ。
なげやりなハシ使いをして、
ゴハンがいっぱいとれないよう」とかね。
ちょっとしたきっかけで、くしゃくしゃっ、と
おさえがきかなくなり、感情大放出。



朝から様子がおかしかった。
寝るときにちょっと、お手当しすぎたか、
バタバタと寝苦しそうでもあったんだ。
だから、出し切るまで待とうと思って、
か~さんはそうあわてずに、
ただ、その感情をみつめていた。


でもまあ、ふつうは、そんな様子をみたら
大人は何かしたくなるもので。
「ちょっと散歩いくか?」とか、
これまた、いろいろたたみかけちゃう。
ガス抜きみたいな気分転換のスイッチが
必要なときもあるけど、
出し切るほうが良いときもある。
ただ、出せばいい、というのは、
何度か山を越えて来た母親のカンのようなもので、
と~さんとも、なかなか、わかちあえていない。


そんなやりとりも少しはさみながら、
ボウズの泣き方はどんどん激しくなり、
ズリズリとイスからおりて
そりかえってみたりしてさ。
「やあだ~」と言うところを座り直させ、
しばらくすると、ふっと静かになった。


セミ、ないてるね」
とボウズ。


その一瞬の静けさのなか、きこえたのね。
とっさに、
「そうだね、セミさんもないてるね。
 セミさんだから、ジ~ッってないてるだけだね。
 ボウズも、ボウズだから、うわ~~って泣いてるだけだね。」
と自分で言ってみて、なんだか納得してしまったんだ。
そう、ワケなんかどうでもいい。
「いっ~~っぱい、出せたね。
 ためずに出せて、すごいなあ~。」



朝は、オナカがいたい、と言っていたんだ。
手当てをすると、
「か~さんのててやると、もっとイタイ!」
前の日の夜から、ちょっとやりすぎたか、
こちらの思いが強すぎたか?とも思ったけど。
いろいろ、思い当たるフシはあり、
夜に食べていたものも、
ボウズには強かったものかもしれなかったけど。


けっきょく、オナカが痛いといっても
変なウンチを出すこともなく、
ただ、疲れて、たくさん昼寝もして、
夜の騒動の後には、もりもり食べつづけて。
そのあと、たっぷり良いウンチも出して、
それだけだった。


うん、やっぱり、いいんだ。
なんだかたまっていたものを出せば、
出せたんだから、いいのだ。