励ますつもりが励まされる
わずかに実った枝豆をそのままにして、
乾燥して黄色くなったさやをとり、
中から出て来た、ちょっと青っぽい小さな大豆を、
また土に戻した。
すぐに芽がでてきて、
豆をかぶったまま伸びていたんだ。
「おまめ、芽が出て来たね~やったやった」
家族みんなで喜んで観察していたそのとき、
ボウズが、その芽にかぶったお豆をちぎっちゃったの。
そうよねぇ、ついこのあいだは、
お豆は、採るものだったもんねぇ。
「ああっ!とっちゃダメだよお!
あ~あ、せっかく芽がでたのに死んじゃった」
瞬間的にと~さんが叫んだ。
「?」顔のまま、なんだか悪いことしちゃった、と
びっくりし、しょんぼりするボウズ。
か~さんがとっさにとった行動は、
そのやぶれたお豆を芽の側に置いて、
芽に手をあてて励ますことだった。
「だいじょうぶだよ!まだ死んでないよ。
お豆は栄養だけど、ひとつは残っているし、
芽は元気だからだいじょうぶよ。」
と、作為からではなく、教育からでもなく、必死で。
「おまめとっちゃってごめんね、だいじょうぶだよね、
がんばれ~~おおきくなれ~~」と手をあてた。
ボウズも、マネして手をあてた。
そうしたら、元気を与えるどころか、
若芽の強いエネルギーが手に向かってくるのを感じて、
逆にその強さに励まされちゃったんだよ。
びっくりした。
それから、その芽は、ぐんぐん伸び、
双葉もでてきたんだけど。
気がついたときには、手をあてて、
ちょっとだけ自分の気も流し、
おかえしにたっぷりの元気をもらっている。