自分で乗り越えていることを確認した夜



卒乳後、か~さんのほうのお手当も落ち着き、
ボウズの状態が落ちついて来た様子なのをみて
さっそく確かめてみたくなった。


いつまでも隠すように引き離すのでは
後になってしこりが残るような気がするから。
オッパイはもういらない、と
ボウズ自身が決めたこととして
しっかり区切りをつけたかったんだ。


夜、今日の出来事のお話をはさみながら
つぎつぎに子守唄をうたっているとき
「タヌキさん」のうた、とリクエストがきた。
『げんこつやまの タヌキさん~』は
オッパイを飲むのだ!
まずは普通に、「オッパイのんで~」とうたった。


そこでやっぱり、ふっ、と表情を変えた彼は
「あのね、オッパイ飲まないタヌキさんのうた」ときた。


か~さんはすこし考えて、
ボウズのうたに変更。
「ごほんを読んで、ねんねして~
 たくさん歩いて かっこいいな!」
とかなんとか、3パターンぐらい
てきとうにうたってみた。
まんざらでもなさそうにのってきた彼をみて
今だ、と思ったんだ。


「オッパイさ、まだ飲みたかった?」
聞くと、「…ぅうん」とはかなげにもらしたあと、
ちょっとうつむいて、泣きそうな声になって、
「オッパイさわりたい」と手をのばしてきた。


ところが、ほんの数秒というぐらいで
ふりきるようにそっと手をはなし、
そのまま自分から話題を変えてきたんだ。


そのあとはまた、たくさん唄をうたって、
すっかり覚えた唄は一緒にうたって、
なにごともなかったように
ス~ッと寝入った。


もうだいじょうぶだね。
自分の意志で、しっかり乗り越えたね。