手当の心得



38度~39度ぐらいの熱を出していたボウズに
なにげなく手を触れた。
オムツを替えているときに。
さいきんまた布オムツにしていて、
寝転がって替えるのが流行っているんだ。


風通りの良い日で、廊下にいたら
ふわっと心地よくなったんだ。
それで、なんとなくそのまま、
熱を出しているボウズのちょっと赤い顔に誘われて。


だから、なんの意図もなかった。
良くなれ~、なんて念じたりもしなかった。
ただその心地良さを共有したい、という感じで
力も入れずに、手をあてたんだ。


オナカや、心臓のあたり、手や足も、顔も、
何も考えないまま、気がむくままに触れていたら・・・
ボウズ、す~っと寝ちゃったんだ。
抱っこしているわけでもなく、固い廊下に寝転がったまま
寝息をたてはじめた。


その寝顔をみていたら、なんともいえない気持ちになり
つづけて、そおっと触れ続けた。
寝返ろうとして途中、目をあけたボウズは
「ここもイタイかった」なんて首のうしろだとか
「アシも」と指をさして訴え、また眠りに入っていった。


そうするうちに、体にこもった熱がひいていくのが
はっきりわかったんだ。
あ、下がったな~、って。


これなんだね。
母の手当て、というやつは。
どうしても念をこめたりしがちで、
『寄り添うように』なんて言われても
なかなかピンとこなかったけれど。
ともに在る、という感じが、わかった気がしたよ。


そして目覚めたボウズは、本当に熱が下がっていた。
これを忘れないように! 熱がなくたって・・・。