誕生日前・・・



ボウズの予定日は、新月だった。
だから、とくに出産直前は、月をみて、
もうすぐ会えることを思ったもの。


ゆうがた、窓からみえる月を発見したあとのこと。
おフロに入る前に、ふいにボウズは言った。


「ひとりぼっちで住んでるのかと思った。」
・・・か~さんが? ボウズが?


「なんで?」


「おなかの中にいたから。
 おかあさんいなかった。」
「おなかから出てきたら、おかあさんいた。」
「あのさ、動物の・・・コアラ。・・・カンガルー?」
・・・
・・・




か~さんがいない間に、と~さんと動物の本でも読んだのか?
どこかで最近、そんな話を聞いたのか???




まあでも、どっちだっていいんだ。
真偽だとかも、どうでもいいんだ。
それをきいて、か~さんの目から、ちょっと水がこぼれた。
ひっつき虫のボウズと、産後のか~さんの生活っぷりが、
さ~~っと流れるように浮かんでは消えて。
・・・熱が出そうででない、しんどいカゼの症状の中だった。
たぶんまた、出そうで出なかったらしいものが、出たのか。


それだけで、いいんだ。




来月、ボウズは誕生日を迎える。
そのこともあり、いま、おたふくかぜのために
家でふたりでゆっくりすごすことは、
ふりかえりもふくめたやさしい時間になっている。
ボウズのオナカ話から、
それぞれ別々の、現実のカラダをとおしたわかりやすい接触が、
産まれてからは、もっとずっと、たくさん必要だったんだろうな、
ということもなんとなく感じたりして。
もっと、まわりの色々にふりまわされたりせず、
ボウズのペースにあわせた、母子だけや、親子3人だけの
ゆったりとした時間がとれていれば、
ボウズはもっとはやく、この世界でも安心できたのでは・・・
なんて、それは、園通いがはじまってからも
感じていたことだったんだよね。
はからずも、おたふくの色々な症状による寝苦しさに、
ひと晩中、あれやこれや手をあててすごしたことも、
きっと今、必要なことだったんだろう、と思ったりもして。




か~さんもカゼで、あんまり、いろいろな遊びはしてあげられないけどさ。
やっぱり今週ぐらいは、もうちょっと、一緒にゆっくりすごすとしようね。