あたたかいもの・・・


臭わなかった!
埃っぽくもなく、
ムッとするような空気が
どこにも漂っていない。


古いものを手にとっても、
ベタついたり、
咳が出そうになったりしない。


あんなに気持ちよく
整えられたところは初めて。
人生で、初めてだ。


あれなら、きっと、
並べられているものも、
何倍も、好きになれる。



それは、
図書室の、
話なのだけど。


町にたったひとつの
大事にされたスペースなのだ、
ってことが、
よく伝わってきた。


司書の人が帰ったあとの時間でも、
けっこう、遅くまで、
ボランティアの人が
そこを守ってくれている。
ものすごく
落ち着いた機嫌で、
親切すぎることもなく、
素っ気なく業務的にでもなく、
適度な距離感で、
こちらの動きをみながら
気持ちをいれて対応してくれて、
それは、伝わってきた。


安心できる場所。


それが、あったんだ。
ここには。


最新の設備とか、
凝った仕掛けとか、
やたら広々とした空間とか、
物とか情報量だけがてんこ盛りとか、
パッと飛び込んでくるようなものは、
な〜んにも、ない。


本当にやってるのかな?って
一瞬、入るのをためらうほど、
外側からみたら、古さ満点。
でも、あたりにゴミとかは
けして落ちてなかった。
すすけたような、
ほころびたような感じは、
どこにもなかった。


入ったら、気が、空気が、
すんでいた。
何より、図書室で、
むせかえるような感じが
すこしも、無いなんて!



だから、ここは
落ち着いているんだ。
こういう空気に、
包まれているのだ。


なんて気持ちが
いいんだろう。


・・・それとは真反対の、
心地悪さをぬぐい続ける日々で、
本当の美しさを、垣間みた。


外見は目をひかなくとも
なんともいえない吸引力があり、
決して己を主張しないから、
居心地がいい。
清々しい気持ち良さが流れて
とどまることがない。


そういう場所は、
ていねいで落ち着いた気持ち、
ひらかれた愛情が、
支えているのだ。